年月分

アベさんに対する銃撃について思うこと

小出裕章(工学者(原子力工学)。元京都大学原子炉実験所助教

以下、小出裕章さんが7月9日に発表したコメントを紹介します。

アベさんが銃撃を受けて死んだ。
悲しくはない。
アベさんは私が最も嫌う、少なくとも片手で数えられる5人に入る人だった。
アベさんがやったことは特定秘密保護法制定、集団的自衛権を認めた戦争法制定、共謀罪創設、フクシマ事故を忘れさせるための東京オリンピック誘致、そしてさらに憲法改悪まで進めようとしていた。
彼のしたこと、しようとしてきたことはただただカネ儲け、戦争ができる国への道づくりだった。
アベさんは弱い立場の国・人達に対しては居丈高になり、強い国・人達に対してはとことん卑屈になる最低の人だった。
朝鮮を徹底的にバッシングし、トランプさんにはこびへつらって、彼の言いなりに膨大な武器を購入した。
彼は息をするかのように嘘をついた。
森友学園、加計学園、桜を観る会、アベノマスク…
彼とその取り巻きの利権集団で、国民のカネを、あたかも自分のカネでもあるかのように使い放題にした。
それがばれそうになると、丸ごと抱え込んだ官僚組織を使って証拠の隠ぺい、改ざん、廃棄をして自分の罪を逃れた。
その中で、自死を強いられる人まで出たが、彼は何の責任も取らないまま逃げおおせた。
私は彼の悪行を一つひとつ明らかにし、処罰したいと思ってきた。
私は一人ひとりの人間は、他にかけがえのないその人であり、殺していい命も、殺されていい命も、一つとして存在していないと公言してきた。
アベさんにはこれ以上の悪行を積む前に死んでほしいとは思ったが、殺していいとは思っていなかった。
悪行についての責任を取らせることができないまま彼が殺されてしまったことをむしろ残念に思う。
多くの人が「民主主義社会では許されない蛮行」と言うが、私はその意見に与しない。
すべての行為、出来事は歴史の大河の中で生まれる。
歴史と切り離して、個々の行為を評価することはもともと誤っている。
そもそも日本というこの国が民主主義的であると本気で思っている人がいるとすれば、それこそ不思議である。
国民、特に若い人たちを貧困に落とし、政治に関して考える力すら奪った。
民主主義の根幹は選挙だなどと言いながら、自分に都合のいい小選挙区制を敷き、どんなに低投票率であっても、選挙に勝てば後は好き放題。
国民の血税をあたかも自分のカネでもあるかのように、自分と身内にばらまいた。
原子力など、どれほどの血税をつぎ込んで無駄にしたか考えるだけでもばかばかしい。
日本で作られた57基の原発は全て自由民主党が政権をとっている時に安全だと言って認可された。
もちろん福島第一原発だって、安全だとして認可された。
その福島原発が事故を起こし、膨大な被害と被害者が出、事故後11年経った今も「原子力緊急事態宣言」が解除できないまま被害者たちが苦難にあえいでいる。
それでも、アベさんを含め自民党の誰一人として、そして自民党を支えて原発を推進してきた官僚たちも誰一人として責任を取らない。
もちろん裁判所すら原発を許してきた国の組織であり、その裁判所は国の責任を認めないし、東京電力の会長・社長以下の責任も認めない。
どんな悲惨な事故を起こしても誰も責任を取らずに済むということをフクシマ事故から学んだ彼らはこれからもまた原子力を推進すると言っている。
さらに、これからは軍事費を倍増させ、日本を戦争ができる国にしようとする。
愚かな国民には愚かな政府。
それが民主主義であるというのであれば、そうかもしれない。
しかし、それなら、虐げられた人々、抑圧された人々の悲しみはいつの日か爆発する。
今回、アベさんを銃撃した人の思いは分からない。
でも、何度も言うが、はじめから「許しがたい蛮行」として非難する意見には私は与さない。
心配なことは、投票日を目前にした参議院選挙に、アベさんが可哀想とかいう意見が反映されてしまわないかということだ。
さらに、今回の出来事を理由に、治安維持法、共謀罪などが今まで以上に強化され、この国がますます非民主主義的で息苦しい国にされてしまうのではないかと私は危惧する。

*小出裕章さんのホームページ

●東京中部ユニオン コメント

7月10日の参議院選挙が終わるまで、「特定の宗教団体」という形でメディアは「統一教会」の組織名を隠していた。

その後、安部を襲撃した人物は、その動機について、母親が入信したことで家族と自分の人生が破壊され、それに関係する安部へのうらみだと述べている。兄は自殺、妹も生活困窮、本人も自衛隊時代に自殺を図っている。親族の証言によれば、自殺の動機は、自殺による生命保険金で、困窮する兄と妹を助けようとしたという。

この「宗教団体」こそ、安部の祖父・岸信介以来、密接な関係を持つ悪名高き「宗教団体」=統一教会(勝共連合、原理研)である。統一教会は、「霊感商法」で巨額のカネを人民からむしり取り、その資金は安部などの極右政治家の資金ともなってきた。多数の自民党議員らは、この統一教会の票をもらって当選し、統一教会は、多くの議員秘書を意識的に送り込んでいるという。根深く政界と癒着しているのである。

安部の写真は、統一教会の雑誌「世界思想」の表紙に何度も何度も登場している。断りなしに表紙を飾るはずがなく、承知の上の行動である。銃撃のきっかけになったのも、安部が統一教会の教祖に、祝賀のビデオメッセージを送ったことを知ったことだと証言しているという。安部は、このようなカルト集団との腐敗した癒着で政界に君臨してきたのだ。労働者民衆を徹底的に見下した政治をほしいままにしてきた人物なのだ。こんな人物を「国葬」にするために私たちの税金を勝手に使うな!